探偵業の届出に必要書類は?個人・法人別の一覧と取得方法を解説

私は行政書士として12年、探偵業の開業届を含む許認可手続きを数多くサポートしてきました。実務で「ここで差し戻された」というつまずきも見てきています。
この記事では、必要書類の一覧と取得方法、提出先と部数、費用、届出書・誓約書・標識の書き方、令和6年改正の影響までを一次情報に基づいて整理します。読み終えたら、そのまま準備を進められる状態を目指します。
探偵業の届出と必要書類とは?まず押さえる基本

最初に制度の土台を押さえます。ここを誤解したまま進めると、書類をそろえても受理されません。
根拠となる法律は「探偵業の業務の適正化に関する法律」、通称・探偵業法です。
そもそも探偵業・探偵業務とは何か
探偵業務とは、他人の依頼を受けて、特定の人の所在や行動について面接や尾行、張り込みなどで調べ、その結果を依頼者に報告する仕事を指します。
探偵業とは、その探偵業務を仕事として継続して行うことです。一回限りの手伝いではなく、繰り返し報酬を得て行う場合に該当します。
なぜ届出が必要なのか(理由と根拠)
ここを勘違いする方が本当に多いのですが、探偵業は「許可制」ではありません。営業を始める前に届け出る「届出制」です。届出は任意ではなく義務です。
届出先は、営業所の所在地ごとに、その地域を管轄する都道府県公安委員会です。ただし書類の実際の提出は、所在地を管轄する警察署(窓口は生活安全課)経由で行います。
届出をしないとどうなる?罰則と虚偽記載のリスク
届出をせずに営業すると、違法業者と判断され取り締まりの対象になります。これは「うっかり」では済みません。
正直に言うと、私が現場で最も注意を促すのは虚偽記載です。欠格事由に該当しないと誓約しておきながら事実と違えば、信用も事業も一気に崩れます。確実に言えるのは、嘘を書くより正直に相談したほうが結局は早く通る、ということです。
探偵業開始届出の必要書類一覧と取得方法
ここが本題です。個人と法人で必要書類が異なります。まずはそれぞれ確認しましょう。

個人で開業する場合は、いわゆる「5点セット」が基本になります。
個人で開業する場合の必要書類
| 書類名 | 内容・取得先 |
|---|---|
| 探偵業開始届出書 | 様式は各警察署・都道府県警の公式サイトで配布 |
| 履歴書 | 本人が作成 |
| 住民票の写し | 市区町村役場。本籍地(外国人は国籍)記載・マイナンバー記載なし |
| 誓約書 | 欠格事由1〜6に該当しない旨。本人が作成 |
| 身分証明書 | 本籍地の市区町村長が発行。破産者等でない旨の記載 |
未成年者が届け出る場合は、法定代理人に関する追加書類が必要になります。
法人で開業する場合の必要書類
法人は個人の書類に加えて、会社そのものを証明する書類が増えます。役員全員分が必要になる点に注意してください。
| 書類名 | 補足 |
|---|---|
| 探偵業開始届出書 | 法人として作成 |
| 定款の謄本 | 法人の根本規則の写し |
| 登記事項証明書 | 法務局で取得 |
| 履歴書 | 役員全員分 |
| 住民票の写し | 役員全員分。本籍記載・マイナンバーなし |
| 身分証明書 | 役員全員分 |
| 誓約書 | 欠格事由1〜5に該当しない旨 |
私の経験上、法人で詰まりやすいのは役員全員分の住民票・身分証明書をそろえる手間です。本籍地が遠方の役員がいると、郵送請求で時間がかかります。早めに動くのが正解です。
住民票の写しの取り方と注意点(本籍記載・マイナンバーなし)
住民票の写しは、住んでいる市区町村の役場で取得します。コンビニ交付やマイナンバーカードでも取れます。
ここで一番のつまずきポイント。探偵業の届出では「本籍地が記載され、かつマイナンバー(個人番号)が記載されていない」住民票が必要です。窓口やコンビニで取得する際は、本籍を「記載する」、マイナンバーを「記載しない」を選んでください。逆にすると受理されません。
身分証明書とは?運転免許証との違いと請求先
ここでいう身分証明書は、運転免許証やマイナンバーカードのことではありません。混同が非常に多いところです。
探偵業で求められる身分証明書は、本籍地の市区町村長が発行する公的書類で、破産手続開始の決定を受けていないことなどを証明するものです。請求先は住所地ではなく「本籍地」の役場。ここを間違えると取り直しになります。
| 項目 | 身分証明書(届出に必要) | 運転免許証など |
|---|---|---|
| 発行元 | 本籍地の市区町村長 | 公安委員会など |
| 証明する内容 | 破産者でない等の事実 | 本人確認・資格 |
| 請求先 | 本籍地の役場 | 代替不可 |
| 届出での扱い | 必須 | 代用できない |
個人と法人で必要書類はどう違う?比較で整理
頭の中を整理するため、個人と法人を横並びで比べます。違いは「会社を証明する書類が増えるかどうか」と「役員全員分が必要かどうか」です。

必要書類の比較表
| 書類 | 個人 | 法人 |
|---|---|---|
| 探偵業開始届出書 | ○ | ○ |
| 履歴書 | 本人 | 役員全員分 |
| 住民票の写し | 本人 | 役員全員分 |
| 身分証明書 | 本人 | 役員全員分 |
| 誓約書 | ○(欠格事由1〜6) | ○(欠格事由1〜5) |
| 定款の謄本 | 不要 | 必要 |
| 登記事項証明書 | 不要 | 必要 |
見て分かる通り、法人は定款の謄本と登記事項証明書が追加され、本人分の書類が役員全員分に膨らみます。
定款の謄本・登記事項証明書の取得手順
定款の謄本は、会社設立時に作成した定款の写しです。手元の原本をコピーし、必要に応じて原本と相違ない旨を記載します。
登記事項証明書は法務局で取得します。最寄りの法務局窓口のほか、オンライン(登記・供託オンライン申請システム)でも請求できます。私はオンライン請求を勧めることが多いです。窓口に並ばずに済みます。
外国人が探偵業を始める場合の書類
外国籍の方の場合、住民票の写しには本籍に代えて「国籍」が記載されます。日本人と同じく、マイナンバーは記載しません。
在留資格によって探偵業を営めるかが変わる場合があるため、ここは自己判断せず、事前に管轄警察署の生活安全課へ確認することを強く勧めます。
届出の手続きの流れ・費用・営業開始までの期間

書類がそろったら、提出先・部数・費用・期限を確認します。2024年4月の改正で費用面が大きく変わりました。
届出場所と提出部数(正本・副本)
提出は、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課経由で行います。届出は営業を開始しようとする前日までに完了させる必要があります。
提出部数は管轄によって正本・副本の扱いが異なる場合があるため、事前に管轄署へ確認するのが確実です。受付印を押した控えを返してもらえるケースが多いので、控えは必ず保管してください。
手数料・費用の目安
ここは朗報です。2024年4月1日以降、探偵業の届出手数料は不要(無料)になりました。
以前は開始届出に3,600円、変更届出に1,500円がかかっていましたが、改正により廃止されています。ただし住民票や身分証明書、登記事項証明書の取得には、各役場・法務局の手数料が別途かかります。
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 届出手数料(2024年4月以降) | 無料 |
| 住民票の写し | 各役場の交付手数料 |
| 身分証明書 | 本籍地役場の交付手数料 |
| 登記事項証明書(法人) | 法務局の手数料 |
届出から営業開始までのスケジュール感
探偵業は許可制ではないため、審査の合否を待つ期間はありません。要件を満たした届出が前日までに受理されていれば、営業を開始できます。
現実的に時間がかかるのは書類集めです。本籍地が遠い場合の身分証明書・住民票の郵送請求に1〜2週間みておくと安心。私が支援するときは、ここを逆算して動きます。
郵送・代理申請・委任状が必要なケース
郵送提出や代理申請の可否、委任状の要否は管轄によって運用が分かれます。行政書士などに代理を依頼する場合、委任状が必要になるのが一般的です。
確実なのは、提出前に管轄署の生活安全課へ電話で確認すること。たとえば埼玉県警察の生活安全課は048-833-3110です。一本電話を入れるだけで、二度手間を防げます。
届出書・誓約書・標識の書き方と記入例
書類の中身でつまずきやすいのが、届出書・誓約書・標識です。順に押さえます。

探偵業開始届出書の書き方
届出書の様式は各警察署・都道府県警の公式サイトで配布されています。氏名・住所、営業所の名称と所在地、営業所ごとの広告・宣伝に使う名称などを記入します。
記入の鉄則は、住民票や登記事項証明書と一字一句そろえること。住所の「丁目・番・号」の表記ゆれだけで差し戻されることがあります。
誓約書の記載例と注意点
誓約書は、探偵業法の欠格事由に該当しないことを本人(法人は役員)が誓う書面です。個人は欠格事由1〜6、法人は1〜5に該当しない旨を記載します。
記載見本は管轄警察署の様式に従うのが確実です。注意点として、署名・日付の記入漏れが意外と多い。提出前に日付と署名をもう一度確認してください。
標識の記載内容・サイズ・掲示場所のルール
令和6年4月1日から大きく変わった点です。従来の「探偵業届出証明書」が廃止され、代わりに規則で定められた様式の「標識」を作成することになりました。
この標識は、営業所の見やすい場所に掲示し、さらに自社ウェブサイトにも掲載することが義務付けられています。サイトを持っているなら、開業と同時に標識の掲載を忘れないでください。具体的な様式は管轄警察の案内に従います。
書類の有効期限(発行から3か月以内など)
住民票の写しや身分証明書、登記事項証明書には発行日があります。古い書類は受理されないことがあるため、提出時点で新しいものを用意してください。
正直、ここで一番もったいない失敗が「先に取りすぎて期限切れ」です。書類集めは提出のタイミングから逆算し、最後にまとめて取るのが安全。具体的な有効期間は管轄署で確認しましょう。
変更・廃止があったときの届出と添付書類
開業後に内容が変わったとき、やめるときも届出が必要です。期限が短いので注意してください。

変更届出書の書き方と提出期限
届出事項に変更があったときは、変更のあった日から10日以内に変更届出書を提出します。登記事項証明書を添付する場合は20日以内です。
変更届出書1通に、変更内容を証明する書類を添えて管轄警察署へ届け出ます。名称や所在地の変更は意外と起きるので、引っ越し・社名変更のときは忘れないでください。
廃止届出書の書き方と提出期限
探偵業をやめたときは、廃止した日から10日以内に廃止届出書を作成し、管轄警察署へ届け出ます。
やめるときの届出を失念する方が一定数います。届け出が残ったままだと無用なトラブルのもとです。廃業を決めたら、10日以内という期限を最初にメモしておきましょう。
令和6年4月改正のポイントと実務への影響

2024年4月1日施行の改正は、実務に直接効く変更が含まれます。ここを知らずに古い情報で動くと事故ります。
改正で変わった点
| 項目 | 改正前 | 改正後(2024年4月〜) |
|---|---|---|
| 届出手数料 | 開始3,600円・変更1,500円 | 不要(無料) |
| 探偵業届出証明書 | 交付あり | 廃止 |
| 標識 | — | 作成し営業所に掲示+自社サイトに掲載が義務 |
実務への影響で大きいのは、証明書の廃止と標識義務の新設です。ウェブサイトを運営する事業者は、標識の掲載まで含めて開業準備に組み込む必要があります。
探偵業者が守るべき遵守事項(名義貸し禁止・秘密保持など)
探偵業法は、業者に守るべきルールを定めています。代表的なものを挙げます。
名義貸しの禁止、業務の実施の原則を守ること、契約前に書面の交付を受ける義務、依頼者への重要事項の説明、そして調査で知った秘密の保持。これらは届出して終わりではなく、開業後ずっと守る義務です。
開業前チェックリストとよくある質問
最後に、準備全体を一覧で確認し、受理されないケースとよくある質問を押さえます。

開業準備の全体チェックリスト
| 項目 | 確認 |
|---|---|
| 届出書の様式を管轄警察のサイトで入手したか | □ |
| 住民票(本籍記載・マイナンバーなし)を用意したか | □ |
| 身分証明書を本籍地で取得したか | □ |
| 誓約書に署名・日付を記入したか | □ |
| 法人は定款の謄本・登記事項証明書をそろえたか | □ |
| 標識を作成し営業所・自社サイトに掲示する準備をしたか | □ |
| 営業開始の前日までに提出するスケジュールを組んだか | □ |
申請が受理されない・差し戻されるケース
私が実際に見てきた差し戻しの典型は、住民票にマイナンバーが入っている、本籍が記載されていない、身分証明書を住所地で取ってしまった、届出書の住所表記が証明書類と食い違う、の4つです。
逆に言えば、この4点を潰せば一回で通る確率は大きく上がります。
費用・始め方に関するFAQ
よくある質問
まずは管轄警察のサイトで届出書の様式を落とし、住民票の取得条件(本籍あり・マイナンバーなし)を満たす一枚を取りに行く。ここから始めれば、迷わず前に進めます。
