探偵業の開業届の書き方|記入例と添付書類・費用を徹底解説

私は行政書士として12年、探偵業の届出を含む許認可を数多く手伝ってきました。受理されずに差し戻される原因はだいたい決まっていて、書き方の型さえ押さえれば怖くありません。
この記事で分かること:2種類の届出の違い、項目ごとの記入例、添付書類の取り方と取得場所、費用、営業開始までの流れ、そして欠格事由と無届のリスクまで。手元で書類を埋めながら一気に提出まで進められる構成にしています。
所要時間の目安:書類の準備と記入で半日〜1日、住民票や身分証明書の取得で別途数十分。難易度は、手順どおりに進めれば初めてでも十分に終わります。
探偵業の開業届は2種類ある|警察署と税務署の届出の違い

探偵業は「許可制」ではなく「届出制」です。営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会へ、実務上は警察署を経由して届け出ます。
ここを最初に整理しておかないと、税務署の開業届だけ出して安心してしまう人がいます。それでは探偵業の営業はできません。
警察署に出す探偵業開始届出書とは
探偵業を営むための、いわば本丸の届出です。届出先は営業所の所在地を管轄する警察署で、警察署を通じて都道府県公安委員会へ届け出ます。
提出期限は、営業を開始しようとする日の前日まで。営業を始めてからでは遅いので、ここは特に注意してください。
税務署に出す開業届とは
こちらは事業を始めたことを税務署に知らせる「個人事業の開業・廃業等届出書」です。事業開始等の事実があった日から1か月以内に提出します。
探偵業の営業許可とは別物で、税務上の手続きという位置づけ。これを出すことで確定申告や青色申告の準備につながります。
両方必要?提出順とそれぞれの役割
結論、個人で探偵業を始めるなら両方必要です。役割が違うからです。
| 項目 | 探偵業開始届出書 | 開業届(税務署) |
|---|---|---|
| 提出先 | 営業所所在地を管轄する警察署(公安委員会) | 納税地を管轄する税務署 |
| 役割 | 探偵業を営む資格の届出 | 税務上の事業開始の届出 |
| 期限 | 営業開始日の前日まで | 事業開始から1か月以内 |
| これが無いと | 探偵業の営業ができない | 営業はできるが税務手続きで不利 |
順番に決まりはありませんが、私は先に警察署の届出を進めることを勧めます。営業ができるかどうかの根幹だからです。税務署の開業届は後からでも間に合います。
法人で開業する場合と個人で開業する場合の違い
個人と法人では添付書類が変わります。個人は届出書・履歴書・住民票の写し・誓約書・身分証明書が一般的です。
法人の場合は、届出書に加えて定款の謄本、登記事項証明書、そして役員全員分の個人書類が必要になります。役員が多いと書類集めだけで時間がかかるので、早めに動いてください。
探偵業開始届出書の書き方|項目ごとの記入例
探偵業開始届出書は所定の様式で提出します。警視庁では「探偵業開始届出書」を含む様式一覧を公開しています。まずはこの様式を入手してから書き始めてください。

氏名・住所・生年月日欄の書き方
個人で届け出る場合、ここには代表者本人の氏名・住所・生年月日を書きます。住所は住民票の記載どおりに、一字一句そろえてください。
よくあるつまずきが、住民票では「1丁目2番3号」なのに届出書に「1-2-3」と略して書いてしまうケース。添付した住民票と表記が違うと確認に時間がかかります。略さず写すのが正解です。
営業所の名称・所在地(屋号)の書き方
営業所の名称欄には、看板に出す事務所名をそのまま書きます。たとえば「○○探偵事務所」。所在地は実際に営業する場所の住所です。
届出は営業所ごとに必要です。複数の営業所を構えるなら、それぞれの所在地を管轄する公安委員会への届出が要ります。1か所まとめてとはいきません。
業務内容欄の書き方
探偵業として行う調査の内容を記載します。所在調査、行動調査、素行調査といった、実際に受ける業務を具体的に書きます。
抽象的に「各種調査」とだけ書くより、扱う調査を列挙したほうが受理がスムーズです。やらない業務まで広げて書く必要はありません。
記入時につまずきやすい点と対処
一番多いのが、住民票・身分証明書の表記と届出書の表記のズレ。これは前述のとおり、住民票どおりに写せば防げます。
うまくいかないときは、提出前に管轄警察署の生活安全課に電話で確認するのが確実です。様式の版が古くないか、添付書類の不足がないかを事前にチェックしてもらえます。
税務署への開業届の書き方|職業欄と屋号の記入例
税務署の開業届は警察の届出より項目がシンプルです。迷うのは職業欄と屋号欄くらい。ここだけ押さえれば大丈夫です。

職業欄は「探偵業」でよいか
職業欄には「探偵業」または「興信所」と記載する例が案内されています。どちらでも問題ありません。
私が手伝うときは、警察への届出と表記をそろえる意味で「探偵業」で書くことが多いです。事業の実態と合っていれば判断は分かれません。
屋号欄の書き方と注意点
屋号欄には「○○探偵事務所」などの屋号を記入します。空欄でも届出自体は通りますが、屋号で銀行口座を作る予定があるなら書いておくべきです。
警察に届け出た営業所の名称と屋号を一致させておくと、後々の書類管理が楽になります。バラバラだと自分が混乱します。
ネットやスマホで電子申請する方法
税務署の開業届は、e-Taxを使えばスマホやパソコンから電子申請できます。マイナンバーカードがあれば窓口に行かずに済みます。
ただし注意したいのが、警察への探偵業開始届出書はこの電子申請と仕組みが別です。税務署の開業届が電子化できても、探偵業の届出は管轄警察署の案内に従う必要があります。両者を混同しないでください。
届出に必要な添付書類と取得方法

探偵業開始届出書には添付書類が要ります。個人なら届出書・履歴書・住民票の写し・誓約書・身分証明書が一般的です。
どこで取るのかを最初に把握しておくと、二度手間が減ります。窓口が分かれているからです。
住民票の写し・身分証明書の取得場所
| 書類 | 取得場所 |
|---|---|
| 住民票の写し | 住所地の市区町村の窓口・コンビニ交付 |
| 身分証明書 | 本籍地の市区町村の窓口 |
| 誓約書 | 所定様式に自分で記入 |
| 履歴書 | 所定様式に自分で記入 |
ここで間違えやすいのが身分証明書です。これは運転免許証のことではなく、本籍地の市区町村が発行する公的書類で、破産手続中でないことなどを証明するもの。本籍地が遠い場合は郵送請求になるので、日数に余裕を持ってください。
誓約書の記載内容と様式の入手方法
誓約書は、探偵業法で定める欠格事由に自分が該当しないことを誓う書類です。様式は管轄警察署や都道府県警のサイトで配布されています。
前述の警視庁の様式一覧などから入手し、所定の欄に署名します。内容は欠格事由に対応しているので、後述する欠格事由を先に確認してから書くと安心です。
法人に必要な登記事項証明書・定款の謄本
法人で届け出る場合、登記事項証明書は法務局で取得します。定款の謄本は会社で保管している定款の写しを用意します。
役員全員分の住民票・身分証明書・誓約書なども必要です。役員が複数いると、それぞれの本籍地から身分証明書を取り寄せる手間がかかります。法人は個人より準備期間を長めに見てください。
届出の手順と費用・所要時間|開始届出書提出から営業開始まで
ここが一番知りたいところでしょう。手順を1ステップずつ並べます。各ステップに「ここまでできていれば正しい」という目安を添えました。

手順1〜完了までの流れ
手順1:管轄警察署を確認する。営業所の所在地を管轄する警察署が届出先です。地図で住所から管轄署を調べておく。→ 提出先が1つに定まればOK。
手順2:様式を入手する。探偵業開始届出書と誓約書の様式を都道府県警のサイトから取得する。→ 最新版の様式が手元にあればOK。
手順3:添付書類を集める。住民票の写し、本籍地で身分証明書、履歴書を用意する。→ 個人なら4点がそろえばOK。
手順4:届出書に記入する。住民票どおりの表記で氏名・住所、営業所名、業務内容を書く。→ 添付書類と表記が一致していればOK。
手順5:警察署に提出する。営業開始日の前日までに窓口へ提出する。→ 受理されればOK。
手順6:税務署に開業届を出す。事業開始から1か月以内に提出する。e-Taxでも可。→ 控えが手元に残ればOK。
この6ステップを終えれば、探偵業の開業に必要な届出は完了です。
手数料・費用の総額シミュレーション
探偵業の届出手数料は、令和6年4月1日以降は不要になりました。届出そのものにお金はかかりません。
| 費目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 探偵業の届出手数料 | 令和6年4月1日以降は不要 |
| 税務署の開業届 | 無料 |
| 住民票・身分証明書など | 各自治体の交付手数料(数百円程度) |
| 登記事項証明書(法人) | 法務局の交付手数料 |
つまり、自分で手続きすれば実費は添付書類の取得手数料くらいです。正直、ここはお金より時間と段取りの勝負だと思っています。
探偵業届出証明書の交付と営業開始のタイミング
届出が受理されると、探偵業届出証明書が交付されます。営業開始日の前日までに届け出ておけば、予定日から営業を始められます。
逆に言えば、証明書が手元に来るまでの流れを見越して、提出は余裕を持って行うべきです。ギリギリに出して当日営業しようとするのは危険です。
標識(届出証明書)の掲示義務とサイズ規定
探偵業者は、営業所ごとに標識を掲示する義務があります。警視庁の様式一覧にも「標識」が用意されています。
標識の様式やサイズは法令で定められているため、自己流で作らず所定の様式に従ってください。掲示を怠ると是正の対象になります。
欠格事由と無届営業のリスク|届出前に必ず確認
探偵業法は平成19年6月1日に施行されました。この法律は、誰でも無条件に探偵業を営めるわけではない、という建て付けになっています。

開業できない欠格事由とは
欠格事由に該当すると届出ができません。誓約書は、この欠格事由に当たらないことを誓う書類です。
破産手続開始の決定を受けて復権していない、一定の前科がある、といった事情が代表例です。自分が該当しないか、誓約書を書く前に必ず確認してください。
該当が不安なときの確認方法・相談先
該当するか判断に迷うなら、自己判断で出さないことです。管轄警察署の生活安全課が相談先になります。
私のような行政書士に相談してもらっても構いません。実際、過去の経歴で迷って相談に来る方は少なくなく、ほとんどは事前に整理すれば不安が解消します。曖昧なまま誓約書に署名するのが一番まずい。
届出を怠った場合の罰則とリスク
無届で探偵業を営むのは法令違反です。探偵業法に基づく行政処分や罰則の対象になり得ます。
罰則以前に、無届だと依頼者からの信頼を一気に失います。届出証明書を提示できない探偵に、人は大事な調査を任せません。届出は信頼の土台です。
開業後に必要な手続きと法令遵守|変更届・廃止届と周辺法令

届出は出して終わりではありません。営業を続ける中で内容が変われば、その都度の手続きが必要です。警視庁の様式にも「変更」「廃止」が用意されています。
変更届・廃止届が必要なケースと提出期限
氏名や営業所の名称・所在地、業務内容などに変更があれば変更届を出します。営業をやめるときは廃止届です。
| 届出 | 必要になる場面の例 |
|---|---|
| 変更届出書 | 氏名・営業所名・所在地・業務内容の変更 |
| 廃止届出書 | 探偵業の営業をやめるとき |
具体的には、事務所を移転した、屋号を変えた、代表者の住所が変わった、といったタイミングです。提出期限は法令で定められているので、変更が決まった時点で管轄警察署に確認してください。後回しにすると忘れます。
重要事項説明書・契約書のひな形の準備
探偵業法では、依頼者と契約する前に重要事項を書面で説明する義務があります。契約書とあわせて、開業前にひな形を整えておくべきです。
開業初日にいきなり依頼が来ても慌てないよう、私は届出と並行してこの書面の準備を勧めています。届出が通ってから作ると、最初の依頼に間に合わないことがあります。
個人情報保護法など周辺法令の遵守
探偵業は、調査の過程で他人の個人情報を大量に扱います。個人情報保護法の遵守は避けて通れません。
取得した情報の管理や、目的外利用をしない体制づくりが必要です。探偵業法だけ守ればよいわけではない、という点を開業時から意識しておいてください。
よくある質問(FAQ)
相談の現場でよく一緒に聞かれる質問を、要点だけまとめました。

よくある質問
最後にひとつだけ。届出は「営業開始日の前日まで」が鉄則です。日付に余裕を持って動けば、探偵業の開業届はそれほど難しい手続きではありません。迷ったら管轄警察署に一本電話を入れる、それが一番の近道です。
