探偵業法とは?届出・費用・罰則をわかりやすく解説

私は行政書士として12年、探偵業の開業届をいくつもサポートしてきました。その実務目線で、法律の中身・届出の手順・費用・罰則・業者の見分け方までまとめます。
この記事を読めば、開業する人は「次にやること」が分かり、依頼する人は「契約前に確認すべき点」が分かります。
探偵業法とは?目的と背景をわかりやすく解説

探偵業法の正式名称は「探偵業の業務の適正化に関する法律」(平成18年法律第60号)。ひとことで言えば、探偵という仕事にルールを与えて、調べられる側の権利を守るための法律です。
所管は内閣府(国家公安委員会)。実際の窓口は各都道府県の警察になります。
探偵業法が作られた背景
昔は探偵業に届出も許可も要りませんでした。誰でも名乗れたわけです。その結果、過剰な調査や個人情報の不正利用といったトラブルが目立つようになりました。
そこで2007年6月1日から、探偵業を営むには届出が必要になりました。いわゆる「届出制」の導入です。
法律の目的(法第1条)
第1条は目的をこう定めています。探偵業の業務運営の適正を図り、個人の権利利益の保護に資すること。調べる自由と、調べられない自由のバランスを取る、というのが法の狙いです。
探偵業・探偵業者の定義(法第2条)
探偵業務とは、他人の依頼を受けて、特定の人の所在や行動についての情報を集めることを目的に、面接による聞き込み・尾行・張り込みなどの実地調査を行い、その結果を依頼者に報告する業務を指します。
逆に、ここに当てはまらない活動もあります。電話だけの聞き込み、資料やデータの分析、ネット上の情報収集、所在・行動に関わらない信用調査などは、この法律でいう探偵業務には含まれません。
興信所・調査会社との違い
よく聞かれるのが「興信所と探偵は違うのか」という質問。法律上は区別されません。看板が探偵でも興信所でも調査会社でも、尾行・張り込み・聞き込みで人の所在や行動を調べるなら、原則として届出が必要です。
名前で安心しないこと。重要なのは届出を出しているかどうか、ここに尽きます。
探偵業を始めるには?届出の手続きと流れ
探偵業に国家資格はありません。届出を出せば営業できます。ただし「出せばいい」ではなく「営業開始の前日までに、正しい窓口へ」が鉄則です。

公安委員会への届出義務(法第4条)
届出先は、営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会。実際の提出は、その地域を担当する警察署の生活安全課(刑事生活安全課)を経由します。
提出のタイミングは営業開始日の前日まで。営業所ごとに必要なので、複数拠点を構えるなら各営業所で手続きします。
届出に必要な書類と記載のポイント
実務でよく扱う基本の書類を整理します。なお、住民票や登記事項証明書など本人確認・欠格事由確認のための書類は、必ず最新のものを用意してください。古い住民票は受理されません。
| 書類 | ポイント |
|---|---|
| 探偵業開始届出書 | 営業所名・所在地・取扱業務などを記載 |
| 住民票の写し | 本籍記載のもの。マイナンバーは記載しない |
| 誓約書 | 欠格事由に該当しない旨を誓約 |
| (法人の場合)登記事項証明書 | 役員全員分の確認が必要 |
私が現場で一番つまずきを見るのが、営業所の実態と書類の不一致です。自宅兼事務所にする場合、所在地の書き方や賃貸契約の用途で引っかかることがあります。
届出から営業開始までのステップ
流れはシンプルです。書類を準備して警察署で事前相談、届出書を提出、受理されると「探偵業届出証明書」が交付されます。この証明書は営業所に掲示します。
正直なところ、書類さえそろえば手続き自体は重くありません。時間がかかるのは事前の準備と、不備の手直しです。
更新・変更届出のやり方
届出に有効期限による更新はありません。ただし、営業所の名称や所在地、代表者などが変わったときは変更届出が必要です。廃業時も届出が要ります。
「証明書をもらったら終わり」ではない、という点だけ覚えておいてください。
探偵業の届出にかかる費用と開業資金の実態
費用の話を、正直ベースでします。探偵業の届出そのものは、許可制の風営法などと比べてハードルが低いのが特徴です。

届出にかかる手数料の目安
手数料の具体的な金額は管轄によって異なるため、ここで全国一律の数字は出しません。住民票や登記事項証明書の取得実費(数百円単位)は別途かかります。正確な金額は、提出先の警察署の案内で確認してください。
開業に必要な資金の内訳
届出自体は安くても、開業全体ではそれなりにお金が動きます。私が相談者に「最低限ここは見ておいて」と伝えている費目を挙げます。
事務所の賃料・保証金、調査用の機材、車両、契約書類の整備、広告費。これらは事業計画によって幅が大きく、一概に金額は言えません。逆に言えば、自宅開業で機材を絞れば初期費用はかなり抑えられます。
探偵業を営めない欠格事由(法第3条)
届出を出しても、次に当てはまる人は探偵業を営めません。ここを見落とすと受理されないので最初に確認すべき項目です。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 破産関係 | 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 |
| 前科関係 | 禁錮以上の刑などに処され、一定期間を経ていない者 |
| 法違反 | 探偵業法に違反して罰金刑を受け、一定期間を経ていない者 |
| 処分歴 | 営業停止命令などに違反した者 |
| 法人 | 役員に上記該当者がいる法人 |
探偵業者に課された義務とルール

届出を出した後は、義務が並びます。これを守らないと行政処分や罰則の対象になります。依頼する側にとっては、この義務が「まともな業者かどうか」の判定基準になります。
名義貸しの禁止(法第5条)
自分の名義で他人に探偵業をやらせること、いわゆる名義貸しは禁止です。届出をすり抜ける抜け道を塞ぐための規定で、警察庁も明確に禁止事項として挙げています。
探偵業務の実施の原則(法第6条)
探偵業務を行うにあたり、他人の生活の平穏を害する等、個人の権利利益を侵害してはならない、というのが第6条の原則です。調べる目的が正当でも、やり方が逸脱すれば違法になります。
依頼者から誓約書面を受ける義務(法第7条)
探偵業者は、調査結果を犯罪や違法行為に使わないことを依頼者に誓約させる書面を受け取らなければなりません。これは依頼者にとっても自分を守る仕組みです。
誓約書を求めてこない業者は、この時点で疑ったほうがいい。
重要事項を説明する義務(法第8条)
契約の前後で、料金や調査内容などの重要事項を書面で説明する義務があります。口頭だけで「とりあえず着手します」と進める業者は法令違反です。
私が依頼者の相談を受けるとき、まず「契約時に書面をもらいましたか」と聞きます。ここが守られていない契約は、後でもめます。
違法になる探偵業務と個人情報保護法との関係
探偵だからといって何でも調べていいわけではありません。ここは依頼する側も巻き込まれやすいので、特に厚く書きます。

やってはいけない調査の具体例(GPS無断設置・ストーカー助長等)
対象者の車に無断でGPSを取り付ける、ストーカー行為の手助けになる調査を引き受ける、差別につながる身元調査をする。これらは第6条の原則に反する典型例です。
「依頼者が頼んだから」では免責されません。違法な調査は、依頼した側も別の法律で責任を問われ得ます。
尾行・張り込みと個人情報保護法(法第9条)
尾行や張り込みは探偵業務として認められた手法ですが、無制限ではありません。第9条は、人の生活の平穏を害する等の方法による業務を規制します。
集めた情報は個人情報です。利用目的の範囲を超えた取り扱いや、不正な手段での取得は個人情報保護法の問題にもなります。「調査だから何でもOK」という発想は捨ててください。
秘密の保持と従業者への教育(法第10条)
探偵業者と従業者には、業務上知った秘密を漏らさない義務があります。退職後も同じです。あわせて、資料の不正・不当利用を防ぐ措置と、従業者への教育も求められます。
つまり「集めて報告して終わり」ではなく、その後の情報管理まで含めて法律の対象です。
違反した場合の罰則と行政処分
ルールには罰がついています。違反の重さに応じて、行政処分と刑事罰の両方があり得ます。

罰則の内容と対象
無届で営業した場合や、名義貸し、業務改善・停止命令への違反などが罰則の対象です。具体的な罰金額・懲役年数は条文で定められていますが、ここでは私の手元で全条文を正確に引き切れないため、断定的な数字は出さず、警察庁の案内で確認することをすすめます。
確実に言えるのは、無届営業は「うっかり」では済まされないということです。
行政処分の種類と公表のしくみ
行政処分には、指示、営業停止命令、営業廃止命令などがあります。処分の事実は公表される運用があり、業者名が表に出ることもあります。
依頼者目線で言えば、行政処分の公表は業者選びの貴重な手がかりです。気になる業者は、所管の情報を一度調べる価値があります。
行政処分の事例から学ぶ注意点
処分の引き金になりやすいのは、書面交付の不備、誇大な広告、そして調査方法の逸脱です。逆に言えば、第7条・第8条の書面と第6条の原則さえ守っていれば、大きな処分にはまず至りません。
開業する人へ。派手な集客より、書面の徹底のほうが事業を長く守ります。これは実務で何度も実感してきたことです。
依頼者が知っておきたい悪質な探偵業者の見分け方

ここからは調べてもらう側の話。高額請求や調査放棄のトラブルは、契約前のチェックでかなり防げます。
契約前にチェックすべきポイント
最初に見るのは「探偵業届出証明書」。営業所に掲示する義務があるので、見せてもらえます。番号を控えて、所在地の警察に問い合わせれば実在確認もできます。
次に重要事項の書面説明と、第7条の誓約書。この2つを省く業者は、私なら勧めません。
料金相場と見積もりの見方
料金は調査の難易度・時間・人数で大きく変わるため、全国共通の相場という数字は出せません。代わりに見積書のどこを見るかを示します。
| 項目 | 確認の視点 |
|---|---|
| 料金体系 | 時間制か成功報酬か、混在か |
| 人員・稼働時間 | 調査員の人数と想定時間が明記されているか |
| 追加費用 | 延長・経費が別途かかる条件 |
| 成功の定義 | 成功報酬型なら「成功」の基準 |
| 総額の上限 | 上限額の取り決めがあるか |
特に「成功報酬」は要注意。何をもって成功とするかが曖昧だと、後で請求でもめます。
クーリングオフや契約解除はできるのか
探偵業の契約は、契約形態によってクーリングオフ(一定期間内の無条件解約)の対象になる場合があります。ただし全ての契約で一律に使えるわけではありません。
だからこそ契約書の解約条項を必ず読むこと。中途解約時の精算方法が書かれていない契約は、避けたほうが安全です。
トラブルを避けるための確認事項
私が依頼者に渡しているチェックの要点はシンプルです。届出証明書、重要事項の書面、誓約書、解約条項の4点。これがそろっていれば、悪質業者の大半は外せます。
逆に、契約を急かす・現金一括前払いを強く求める・領収書を渋る。この3つが重なったら、いったん立ち止まってください。
探偵業法に関するよくある質問
相談現場で実際によく受ける質問に、結論から答えます。

よくある質問
最後に一言。開業する人は「書面の徹底」、依頼する人は「届出証明書の確認」。この2つを押さえるだけで、探偵業法まわりのトラブルはほとんど防げます。迷ったら、まず管轄の警察署に問い合わせるのが一番確実です。
